製品企画について

機構設計者として企業で働いていると、設計仕様に対して疑問を呈することが多々ある。その多くは、設計優先度を立てられないような物についてである。

そんなとき、私は、企画者に質問に行く。その要求事項の優先度を確認するために。。。

すると、多くの企画者は、「分からない」「試作品ができてから考えようとしていた」などと言う。要は、分析できていないことが浮き彫りになるのである。

世の企画職の方に、機構設計者として申し上げたいことがある。

それは、

「要求事項は、必ず、重要度を数値を持って示してほしい」

ということである。

なぜこのようなことを言うかというと、そうしないと具体的な設計が進まないからである。要求事項の中には、多くのトレードオフがあり、そのパワーバランスを考える際の指標がないと、材料選定も構造も定まっていかないのである。

例えば、プロジェクターのような電気製品でいえば、「 インターフェースは10種類備えること(もちろん同時差し可能) 」「光出力をX[lm]以上にすること」「片手で持てるようにすること」「デザインの観点から投影口以外の開口はなくすこと」「とにかく小さくすること」などという無茶が平気で出される。

多くの企画者は、これらの要求事項を仕様書にまとめて提出したら、仕事終了とでもいった感じで定時帰りをする。しかし、どんな馬鹿がみても、この要求事項は互いに矛盾をしているのである。

そんなときに、この要求事項の何よりもこれが大事!次はこれ!というのが書いてあれば、機構設計者は、設計方針が立つので救われるのである。

上記の例でいえば、

優先度1:光出力をX[lm]以上にすること

優先度2:とにかく小さくすること

優先度3:インターフェースは10種類備えること(もちろん同時差し可能)

優先度4: デザインの観点から投影口以外の開口はなくすこと

優先度5: 片手で持てるようにすること

などという感じである。このように書いてあれば、機構設計を行う際の「軸」ができるのである。そして、関係者にレビューをする際にも、企画書にのっとった設計思想であることが伝わるので、企画者は勿論のこと、設計の次工程である工場関係者や営業の方にも、透明性のある開発説明ができるのである。

このとき、企画書に優先度が書いてないと、設計の軸が人によって、チームによってバラバラになるので、「そもそも論」が勃発するのである。そして、その光景をみた、工場関係者や営業は、「まだ自分たちの要求は通るかもしれない」などと考え、その場で言いたい放題を言うようになる。そして、それを見た企画者は、(自分たちが営業へのヒアリングを怠った非を出さないために)その言葉を議事録に残し、設計仕様書に追加をするのである。

この侃々諤々(カンカンガクガク)とした議論は、無駄ではないだろうか?そして、それにその皺寄せが全て機構設計者にきていることがご理解いただけたであろうか?さらに、そんな要求全てに答えられる人はいると思うか?(答えられません)

こうして出来上がった製品は、開発日程の中で出来たなりの物にしかならず、構造的に無理が生じるために問題がいくつも残り、小さな爆弾を抱えたままお客さんの元に出荷されるのである。そして、機構設計者たちは、その爆弾の火消しに追われ、しかし、それはモグラたたきのようなもので、一つを消したら、別のところから火が…となるのである。また、多くの企業では、コストダウン活動をしなければならないので、品質が低下し、消した火がまた出てくることも容易に想像できる。。。このように、機構設計者は疲弊し、心労を負い、過労死する者もでるのである。。。これ全て、企画の怠慢と無能ゆえの現状である。

長く機構設計者として働いてきた者として、会社と企画者のあるべき姿を下記に記す。

・企画が無能な会社は、良い製品を作れない。

 ※良い製品:ウリが明確で、それに即した無理のない形状をしている製品。

・お客様に提供した姿をイメージし、言葉にできない企画者は、不要である。

 ※ 部長が!社長が!などと言っているような人は、向いてないです。

・会社は、企画にこそ「統計学」と「分析能力」にたけた優秀な人材を置くべきである。

 そして、要求事項を数値で語ってください。それが製品のQCDを満たす近道です。

・企画者は、まとめた要求事項を、分析力をもって優先度をつけられなければならない。

・要求事項収集の際は、市場、営業、開発へのヒアリング、または打ち合わせは必須である。営業や開発から、相談を持ち掛けられるまで動かないような者は、不要である。

・統計学のスペシャリストであるべきである。

 統計学に疎い企画者は、「企画に統計学を使うのは古い」「データは好き勝手に作れるから意味がない」などと生意気なことを言う。それ、何十年も前のおっさんと同じ頭ですよ!人類の宝とでもいうべき天才たちが作ってきた技術を、天才でもない企画者が貶せるわけないでしょう。古いと思うのは、あなたが理解して使いこなせないからです。データが好き勝手に作れるというのは、アベコベです。データは嘘をつかないです。ただ、解釈する人が理解できず見抜けないだけです。

 統計学を日々学び、実践してください。サンプル数が少なければ、少ない数から推定することもできるはずです。また、少ない数でも確率的にあり得るあり得ないを判定できることも沢山あります。行動してください。

企画、設計、営業は、物作りの三大重要部署です。多くの会社では、設計に多くの皺寄せが来てしまっています。企画と営業は、今一度、自分たちのあるべき姿を見直しましょう。そうしなければ、海外勢に負け続けることになります。