機構設計者の物作り概要

何かを作るときに、皆さんは、まず何から考えるであろうか?作ろうとしている物を漠然と頭に思い描き、すぐに、ポンチ絵を描いたり、CADを動かしたりしていないだろうか?今日は、私が新人時代に当時の上司から厳しく指導を受けた内容を紹介する。

そもそも、物作りの「物」って何?

今までの経験から、現状、「所望の機能を果たす、形、構造、システム のこと」だと考えています。


よって、物作りとは、「実現したい姿があって、それを叶える仕組みを考えて明確にし、実際に形にすること」だと、考えているわけです。

【物作りの3STEP】

① 実現したい姿 の明確化

② 具体的な仕組みを考え、答えを出す

③ 実際に形にする

私の経験上、上記を一つでも怠ってできた対象は、何らかの欠陥を抱えています。例えば、機能を十分に満たせていないとか、材料を買ってきて作ってみたけど使い物にならないとか。。。絶対に、何か物を作るときは、アートするときは、①から③を紙などに書き出し、紙面上で完璧にしてから作ってください。

企業での機構設計とは?

企業での機構設計も同じである。まとめると下記のような感じになる。

①に相当するのが「要求仕様の整理」である。料理やDIYでは、作りたい物の姿を最も明確に持っているのは作る人自身なので、その人が分かっていれば良いのだが、企業ではそうはいかない。製品が世の中で使われる姿を最も明確にしているのは「企画部」である。よって、彼らの想いを明確にし、設計者として咀嚼(ソシャク)し、企画部と合意をとる必要がある。

この企画部の要求事項を咀嚼するときに重要になるのが、彼らの想いをまとめた書類である、「商品企画書」「設計仕様書」である。また、製品に求められる安全性が色んな規格で規定されているのだが、対象製品に対して必要な規格をまとめた「製品安全性規格書」も完璧に理解して、要求事項の中に盛り込まなければならない。これが欠けていると、認証機関のテストに合格しないので、出荷できなくなってしまうのである。注意が必要である。

②に相当するのが、構想設計と詳細設計である。ごちゃごちゃ色々書いてあるが、要は、実現手段の明確化とそれが要求事項を満たしていることを論理的に確認する工程である。「紙上試作」、「パソコン内試作」ということもある。ここで、製品や部品の完成度の90%は決まるので、徹底的に行う。ただし、とても疎かにする人が多いです。一部の例外的なエンジニアを除いて、それはやってはいけません。※

あれ、③は?と思うかもしれませんが、②までが完璧にできていれば、後は加工メーカー様と打ち合わせをして完了です。その打ち合わせも、②における詳細設計の段階で、例えば、加工精度、金型のPL、勾配設定、公差計算、強度計算などがしっかりされていれば、特に混乱もなく終了です。逆に、これが曖昧だと、工場に行って何度も立ち会って、加工条件を取り決めてくる、設計変更を繰り返すなどが発生します。注意が必要です。

企業での機構設計では、要求仕様の整理 と 構想・詳細設計 が最も大事です。全力で取り組みましょう

※ 一部の例外的なエンジニアについて

これは、紙上試作やパソコン内試作が、全て頭の中の「思考」のみで完璧にできてしまうエンジニアのことです。書道は、楷書 → 行書 → 草書 の順に進んでいき、紙に何枚も何枚も書き、やがて平面をみれば何処でも書を想うようになり、最終的には空をみて書を想うようになれば、道が極まると聞いたことがあります。ここでいう一部の例外的なエンジニアとは、エンジニア道を極めた達人のことなのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です