人をみるということ

今日は、人をみるということについて呟きたいと思う。

日々生きていると、何十、何百、と言う人と出会う。知人がおり、友人がおり、家族がおり、ときに恋人がいる。

学生は、毎日、クラスの友達、先生、部活の仲間に出会う。

婚活や恋活、意図的な友達作りをしている人は、それなりのコミュニティに参加したり、アプリを使ったりするので、毎日、何十人という異性と出会うであろう。

社会に出て仕事をする人は、毎日、チームや得意先と出会い、、毎日、多くとも20人弱と関わるであろうか。

このように、我々人間は、日々、他人と関わって生きているのだが、今まで生きてきて、多くの人が人をちゃんと見ていないと良く感じ、本日のこの記事を書くことにした。何も、私が承認欲求が強く、認められてこなかったから、この記事を書くわけではない。

「物事をちゃんとみる」とは、どういうことであろうか?

それは、今、自分の目の前にある物や事を、自分の五感で捉えるということである。それが、良く知っている物や事ならば、捉えなおそうとするということである。

なぜ捉えなおす必要があるのか?それは、物事の今をちゃんとみて、真剣に向き合うためである。まして、それが人相手ならばなおさらである。

私は、人は三日で別人になれると真剣に思っている。学生であれば、三日前には明らかに間抜けだった奴がテストで良い点をとったり、恋人ができて素敵な経験を経て一気に所作に余裕をみせるようになったり、三日間で仕事に必要な知識を習得し会話についてきたり、、そんな経験をしたこと、そんな変化をした者を、数多くみてきたからである。また、三日前は元気で、今はこの世にいないとか、、三日前は幸せだったのに、今は鬱になっているとか、そんな変化も目の当たりにしてきた。

今、人も世の中の変化も、速いのである。こんなとき、意識的に、捉えなおすことをしなければ、本質を見落としやすくなるのは当然である。

せっかく大人になり、自信を深め、物事にチャレンジしようとしている男がいたとして、、その変化に気が付かず今まで通りに子供のように接したら、それこそ失礼であり、、せっかくのパートナーを失うことになるのである。

せっかく自己研鑽をした人がいても、その成長を探ろうとせず、今まで通り接していたら、宝も腐ってしまう。まずは、毎日、毎瞬、出会う度に、、会話の中でその人を捉えなおそうとして欲しい。きっと、相手は喜ぶし、それは、あなたに幸運をもたらすことは間違いない。

数年前に興味がないとして振った異性だが、今目の前で会話していて、捉えなおしたらあれ?と思うこともあるのである。もっとも、この話をしていて思うのは、「ちゃんと捉える」とき、「自分の記憶」と照合するのだが、その記憶が常に変動していることに注意が必要だということであるが。。。

私は、毎回、出会う人、会話する人、メールする人、、真剣に捉えなおしています。とても疲れることだけど、とても楽しく、ときに(知りたくないことも気づいてしまって)辛く、全体的に素晴らしいことだと思っています。

では。

【本日の動画】ハングリースパイダー

(捕食者である)蜘蛛が、(獲物である)蝶に恋をする物語です。好きなあの子を、生きるために食べるべきか、あの子の幸せを考えて逃がすべきかに葛藤する蜘蛛の心を描いた歌です。逃がしたとしても自分の恋心は報われず、蝶は自分を敵としてしか捉えず去っていくのみ。しかし、情をかけずにはいられない蜘蛛。。何と言う情景であろうか。。美女と野獣は、美女が野獣の本質を理解したからこそ、そこに愛があり、野獣の献身と悲哀、そしてハッピーエンドが見る者を幸せにしてくれた。しかし、蜘蛛と蝶は、、、。内面を理解すること、その重要性を気が付かせてくれる、麻薬のような名曲です。

エンジニア,問題解決,基本

私は、機構設計という分類のエンジニアである。

材力、工力、流体力学、回路、熱、統計力学といった知識を駆使して、製品を成立させる形状や機構を作るのが仕事である。簡単に言えば、製品を目に見える姿にするのが仕事である。今を時めくソフト設計者は、機構設計者が作った物に、命を吹き込む役割である。これもまた、重要な仕事である。

本日は、こうしたエンジニアが、業務上の問題を解決するときにやるべきことを申し上げたいと思う。

それは、「問題をしっかり把握し、原因仮説を立て、個別に対策法を立案する」ということである。

こんなことは、当たり前のことなのだが、実際に、それなりの大手と言われる会社で何年も働いていて思うのは、この当たり前のことができない人がほとんどなのである。

本日、私か申し上げたいことは、これで終了である。ただ、話を終わる前に、「この当たり前のことをやっていない殆どの人は、どうやって対策してきたのか?」を示したいと思う。自分が、そうなっていないかを自問してもらうためである。

【多くの人の問題対策の仕方】

 過去の類似した成功体験を思い出す ➡ ( その「仕組み」を理解せず )対策を実行する

このアプローチの良くない点は、二つある。

① 目の前の問題を、分析していない。

そのため、成功体験における問題が、直面している問題と等価か分からない。

よって、対策が的外れになる可能性が高い。失敗してしまったら、また類似例を記憶から探せばよいと言うかもしれないが、そんなに沢山の記憶を引っ張り出せる人は中々いない。ベテランでもそうである。それができる人がいる職場は幸せだか、それはまれだと思った方が良い。大抵は、皆、沈黙である。

② 成功体験が何故成功したのかの仕組みが、分かっていない。

そのため、対策が失敗したときに、なすすべを失う。このとき、失敗した事実を元に、思い付きのCUT&TRYを積み上げて結果を出す方法もあるが、これでうまくいことは中々ない。上手くいったとしても、予想外の時間とお金を費やすことは確実である。

こうならないようにするためには、「問題を分析し、原因を仮説立て、対策案を立てる」という思考を、大学受験であったり、大学や大学院の研究を通じて多くの人は学んできたはずなのだが、いざ、実際に取り組むとなると、何故か出来ないのである。

本日申し上げたことは、実は、ベテラン社員が良くやりがちなことである。ベテランになると、経験が沢山蓄えられてくるので、無意識にそれを過信し、その中で解決しようとするからである。そんなとき、その成功対策の原理が分かっていて、かつ問題が過去の成功体験と等価であると分かる場合ならば良いのだが、、同じような課題に対してベテランでも、、若輩と同じく、むしろそれ以上に問題解決に難儀している姿を多く見てきて、ああ基本を疎かにしているんだなと、確信をするのである。

【本日の動画】高麗川のせせらぎ

最近、少し体調を崩しており動画の撮影に行けていません。少し前に行った、高麗川のせせらぎです。ボーっと眺めていると、眉間の左側が何だかムズムズしてきます。

職場での意志疎通の成立性

会社で、仲間と仕事をしていく上で、意思疎通は大事である。しかし、会話がスムーズに進む人とそうでない人がいる。こうした状況を数多く経験してきて、その原因の一つは、双方の精神年齢とIQの差が大きく関係しているのではないかと思い、つぶやくことにした。。

職場での意志疎通の成立に影響すると思う要素

① 精神年齢

② IQ

本日の話は、上記の視点を前提に展開する。①は思慮深さ、胆力のことをさす。②は頭の良さのことをさす。私は、共に仕事をする者同士が、この①と②の観点から、どの組み合わせのときに意思疎通がうまくいっているかを、自分の経験と他人の観察によって、整理してみた。下記の図1~3で示す。

( ※ 当然、 一般性はない。あくまでも参考意見に留めて頂きたい。 )

図1. 共同労働者同士の精神年齢とIQの高低による意思疎通の成立感1

チンパンジーのIQは、一説によると50程度である。人間で極度の低IQと呼ばれる者は、70程度。チンパンジーとの差は、20ほどだが、人は言語を操り、記憶、計算、推論を行うことができる。何を言いたいかと言うと、IQ20程度の差は、感受できる世界、できることが大きく違うということである。なお、人で言えば、89以下は低IQ、90~109は普通、110以上は高IQである。先のIQ20の差を適用するならば、高IQと低IQは意思疎通が成立しない。この観点から、まず、意思疎通の成立性を〇×△で示した。

ここで、精神年齢という概念を持ち込む。精神性の高い人は、共に何かをしようとすると、歩み寄りの姿勢を見せる。賢い者は、相手に伝わるように会話の程度をかみ砕き、平易な表現で言い換える。一方、知能の劣る方は、分からないなりに思考を行い、相手との理解の差を埋めようと努力する。この双方の歩み寄りにより、単純なIQ差で会話が成立しなかった者同士が、会話できるようになる。図2にこの歩み寄りの概念図を示した。

図2.「歩み寄り」が、意思疎通におけるIQ差を縮める概念図

これは、言語とイメージを操る人間だからできることである。こうして、図1に見られるように、双方の精神性が高まるにつれて、意思疎通の×が△に、△が〇になる場合があることを表現した。

図3. 共同労働者同士の精神年齢とIQの高低による意思疎通の成立感2

図3では、IQと精神性がそれぞれ一ランク異なる者同士の意思疎通の成立感を示した物である。先ほどの、IQと精神性が高くなることで見られる歩み寄りの姿勢により、表現した。上位の知能、低精神年齢の者は、基本的に下位の知能の者と共同作業ができないので、要注意である。

以上の考え方に従って、図1や2で表現されていない関係も考えてみて欲しい。職場で自分が意思疎通しにくい人と自分の立ち位置が分かり、気持ちが整理されることを期待しているからである。そうすれば、接し方を考えやすくなるとおもうのである。

【本日の動画】鎌倉のとあるお寺

のんびりお散歩を楽しんできました。時間が早かったので、あまり人もおらずよかったです。カエルの合唱、鳥の美しいさえずり、、何とも心が落ち着きます。こうした風情を感じられる鎌倉は、素晴らしい場所だと思うわけです。。

数式での遊び2(熱設計版)

今日は、前回に続き、数式の遊びを紹介する。テーマは、熱設計である。

熱設計とは、「製品開発において、物を作る前の構想時点で、熱源が冷えるような機構を考えること」を言う。この概念を知らず、モノが出来てから、筐体に孔をあけたり、適当なヒートシンクを持ってきて取り付けたりでは、昨今の高発熱密度な製品や部品を冷やすことは不可能である。

一重に熱設計と言っても、やり方は、問題設定によって様々である。

Q1:筐体内に、発熱量P[W]の熱源がある。これを何か特別な機構で排熱する必要があるか?

Q2:Q1で排熱する必要がある場合、どれだけの流体を当てればよいか?

Q3:高発熱密度な部品がある。この熱をある領域まで広げたい。どうする?

Q4:ある熱源がある。風が一方向から吹いている。これを冷やすには、どれくらいの空間と風量、ヒートシンクがあればよいか?

などなどである。

本日は、Q4について、一つのアプローチ方法を紹介する。大学、大学院で研究活動をしたことのある方は、必ず、最適化問題を何らかの形で触れたと思う。

本日紹介するQ4へのアプローチを理解した上で、是非、この方程式を、特定の量に対して最適化する方法を考えてみて欲しい。。それはきっと、あなたが真のエンジニアや研究者になったときに、問題を解決する素晴らしい力の源になると思うからである。また、是非、私にもそれを教えて欲しい。

【問題Q4】

ある熱源がある。風が一方向から流れている。この時、熱源を冷却するには、どれくらいの空間とヒートシンクがあればよいか?ただし、熱源の熱は、ヒートシンクに全て移動できるとする。また、ヒートシンクのフィンの加工上の制約条件は、無視しても良い。

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まず、条件を整理、仮定してみる。

◎ 熱源 ⇒ 発熱量 P[W]、目標温度 Tt[℃]、周囲環境温度 Ta[℃]

◎ 風 ⇒ 風量 Q[m3/min]

◎ 空間サイズ ⇒ 流路サイズと考える。

 ・流路幅 W[mm]

 ・流路長 L[mm]

 ・流路高さ H[mm]

◎ ヒートシンクサイズ

 ・FIN幅 ω[mm]

 ・FIN間距離 δ[mm]

 ・FIN数 n[枚]

 ・FIN長 L*[mm]

 ・FIN高さ H*[mm]

次に、これらを図示してみる。問題は、情報の仮定と整理をし、図示することで、より理解が深まる。これが「数式遊び」の極意であると、私は思っている。

図1. 熱源と周辺空間(流路)の関係イメージ

ここで、問題で問われている、ヒートシンクについて考えてみる。ヒートシンクは、流路の中に位置する部品である。また、ヒートシンクは、流路に対して水平かつ短冊状にFINが配列される部品である。よって、例えば、下図のように仮定してあげれば良い。つまり、流路をヒートシンクのFINで刻んでやるのである。

図2. 流路にヒートシンクを配置したイメージ

図2では、流路長L、流路高さHが、それぞれ、FIN奥行きL*、FIN高さH*と等しいとした。

さてこのように図化すると、例えば、以下のように、「熱源情報、寸法情報、風量」に関する関係式 を立式することができる。

1). ヒートシンクサイズに関する関係式

  • 放熱面積:S = n × ( 2HL ) [mm2] ・・・①
  • 包絡体積:V = WH = { nω + ( n+1 )δ }H [mm2] ・・・②

FIN数 n[枚], フィン高さH[mm], FIN奥行き(=流路長)L[mm]

ヒートシンク幅(=流路幅)W[mm], FIN幅 ω[mm], FIN間距離 δ[mm]

2). 熱伝達率hm[W/(m^2・K)]の定義式 と熱抵抗値R[K/W] の関係

  • hm = P/{S・(Tt – Ta)} = P/(S・ΔT) [W/(m^2・K)] ・・・③
  • R = (Tt – Ta)/P = ΔT/P [K/W] ・・・④

発熱量P[W], 目標温度Tt[℃], 周辺空気温度Ta[℃]

hm = 1/(S・R) [W/(m^2・K)] ・・・⑤

ここで、放熱面積Sの単位は、mm2 とすることが多いので、⑤式もそのようにしておくと便利である。つまり、

hm = 10^6/(S・R) [W/(m2・K)] ・・・⑤’

である。

なお、この式において、風が熱を空気中に移動させる能力である熱伝達率が分かっていれば、どれくらいの放熱面積が必要かが分かる。⑤’式を変形すると、、

S = 10^6/( hm・R ) [mm2] ・・・⑥

となる。少なくとも⑥式以上の放熱面積を取れば、よいと目算ができる。

  • S ≧ 10^6/( hm・R ) [mm2]・・・⑦

3). 強制熱伝達率hmf [W/(m^2・K)] の関係式

  • hmf = 3.86×(U/L)^0.5 [W/(m^2・K] ・・・⑧
  • Q = AU [m^3/s] ・・・⑨

⑧式は、熱設計関係の書籍でよく登場する式である。論文などを見ると、条件別に色んな式があるので、適宜参照してほしい。。が、熱設計指針をざっくり立てるのが目的なら、、正直、この関係式だけ覚えておけば良い気もする。

⑨は、流体力学の初めの方に登場する、連続の式である。流路内において、流路断面積A[m2]と流速U[m/s]の積が一定というものである。⑧式に⑨式を代入すると、、、

  • hmf = 3.86×{ Q/(AL) }^0.5 [W/(m^2・K)] ・・・⑩

 風量 Q[m3/s], 流路断面積 A[m3], 流路長L[m]

となる。ここで、流路断面積Aは mm2で、風量Qは m3/min で考えることが多いので、これをQp[m3/min]として⑩式に代入する。

  • hmf = 3.86×{ Qp/( 60AL )×10^8 }^0.5 [W/(m^2・K] ・・・⑩’

 風量Qp[m3/min], 流路断面積A[mm2], 流路長L[mm]

以上の式から、⑦式と⑩’式を、hm = hmf とし、さらに⑦式に①式を代入すると、、「熱源情報、寸法情報、風量」に関する関係式 が導かれる。

S ≧ 10^6/[ 3.86×{10^8×Qp/(60AL) }^0.5 ]

2nHLR ≧ 10^6/[ 3.86×{10^8×Q/(60AL) }^0.5 ]

式を整理すると…

  • QL×(nHR)^2/A ≧ 6,350 ・・・⑪

となる。ここでさらに、流路断面積A = (n+1)δ×H なので、⑪式に代入して整理すると、、

  • QHL×(nR)^2/{δ(n+1)} ≧ 6,350 ・・・⑫

となる。

後は、これに確定している量を代入して、欲しい未知量を求めれば良い。

例えば、良く開発現場で、この熱源を冷やすのに必要な空間とヒートシンクサイズを見積れと言われる。驚いたことに、使用できるFANが決まっていることもある。この場合、仮に、Q = 0.1m^3/min, R =1K/W とすると、、⑫式は、

HL×n^2/{δ(n+1)}≧63,500

を満たせば、何でも良いとなる。。さて、あなたは、これにどう答えるであろうか??変数は、4つである。如何にすれば、最適といえるであろうか??

定石は、変数の変域を定義するのである。。。が、開発現場では、これを否定されることの方が多い。理由は、(熱設計者が)変域を定義し、(承認者らが)それを許容して、最悪の条件が導かれたときに、(承認者らが)プライドが傷つくのを恐れてGoサインを出せないからと、かねがね感じている。話を戻して、変域を定義してみる。

例えば、

・1 ≦ H ≦ 30mm

・1 ≦ L ≦ 50mm

・1 ≦ W ≦50mm

・ω≧0.3mm

・δ ≧0.6mm

・n > 0

とする。Wは、ωn+δ(n+1)という具合にFINとの関係が深いので先にこちらを考える。W≦50mm より、、

0.3n+δ(n+1) ≦ 50mm 

である。δ=0.6mmとすれば、0.3n+0.6n+0.6=0.9n+0.6≦50 なので、

n ≦ 54.8 ( ただし、δ = 0.6mm, ω = 0.3mm )

ここで、HとLの関係に式を詰めていく。

HL×54^2/{0.6(54+1)}≧63,500

↔ HL≧ 718 (1≦H≦30, 1≦L≦50)

このことから、最小のHとLは、HL=718の境界上の任意の数で良いので、、例えば、(H,L)=(14.36, 50) となる。

まとめると、熱抵抗値R=1K/W、風量Q=0.1m3/min の風が流れる流路において、フィン間距離δ=0.6mm、フィン幅ω=0.3mm、流路幅W=50mmとして、フィン数n=54枚 とすれば、、最小のフィン高さ(=流路高さ)H=14.36mm、最小のフィン奥行き(=流路長)=50mm と算出できる。。(あれ、あってんのか)。。色々課題を思いつきましたが、、、今日はここまでにしたいと思います。。

では。。

【本日の動画】相模川の水の煌めき

激しい流れに、太陽の光が反射し、キラキラ煌めいております。見ていると、雑念が払われて、スッキリしてきます。

数式での遊び

機構設計者として、日々仕事をしていると、色んな問題に直面することになる。

Q: こんな構造は、どうやって作るのか?

  • 材料は?
  • メカニズムは?
  • 強度は?
  • 時間変化は?
  • 入手性は?
  • コストは?
  • 加工性は?
  • 組み立て性 は?[量産性]
  • 法律は?
  • 管理は?
  • その他…

熱設計者なら、

Q: この筐体サイズの中に、こんな発熱部品があるのだが、部品は使えますか?

  • 筐体サイズは?
  • 部品サイズは?
  • 部品毎の発熱量は?
  • 部品毎の目標温度( = 動作保証温度 )
  • 使用環境は?
  • 騒音値の制限はあるか?(=強制空冷ができるかどうかに関わる)[静音性]
  • それで冷えるの?[冷却性]
  • もっと小さくできないの?[小型化・薄型化]
  • もっと軽くできないの?[軽量化]
  • 金属なら回路部品との絶縁を取らないといけないけどどうすんの?[絶縁]
  • コストは?もっと下げられないの?[ロウコスト]
  • 加工性は?
  • 組み立て性は?
  • 入手性は?
  • 法律?
  • 管理?

などなどである。

熱設計の場合は、開発開始時点で、筐体サイズが決まっていなかったり、内部に搭載する部品の種類、数、サイズ、発熱量が決まっていなかったりする中で、常に、上記の質問を問われ、必ず「最適か?」という質問が副えられる。しかも、要求事項の全体像が分かっていない無能な企画者が多いと、設計者が見積もりを出すために「条件設定、定義」をすることすら否定される。。。

この状況に対して、一般的な理系の大学教育を真面目に受講した者ならすぐに分かるが、「条件設定が禁止された関数の最適化は、不可能」なのだが、そこが分からないのである。勉強はしっかりしましょう。思うだけで、技術の積み上げを超越した物ができるほどの技術を、我々人類はまだ手にしていないのですから。。

さて、前置きが長くなったが、、機構設計者は、上記のような多くの質問に常に答えなければならないのである。これらは、侃々諤々(かんかんがくがく)とした議論を続けていても、全く答えは出ない。計算をするか、実験をしてデータを元に推論をしていくかでしか、答えは出ない。実験は、基本的に試作をして行うので、お金と時間がかかる。いずれも有限なものですから、大切にしなければならない。そこで、基本的には、計算をして、試作をするにたる予測をするのが重要になってくるのである。。

では、どうやって計算をするのか??

一般的な強度計算に対しては、材料力学の教科書を引っ張り出してきて、モデリングしようとしている形状を角柱や円柱に簡易化し、その上で、変形や強さの関係式、安全率の概念を適用すれば、おおよその指針が立つ。その計算で強度がNGならば、CAEをやっても恐らく強度NGで、試作をしても同じである。

例えば、ある部材の変形量に関する議論においては、一つの関係式を元に、結構な設計の見通しを立てることができる。

【最大変形量の関係式】

上図は、材料力学の教科書やHPをみれば直ぐにでてくる情報である。

δ:最大変形量、L:材料の長さ、E:縦弾性係数(材料で決まる)、I:断面二次モーメント、F:付加する力、w:材料の幅、t:材料の厚み、kやαは係数。この係数も、前述の教科書やHPを参照すれば、直ぐに出てくる。正の値である。

設計する場において、材料の厚みtを何ミリにすればよいか?という議論があったとする。この時、例えば、上の式において、L,w,E,Fを固定すれば、、、

という関係式に整理できる。A=kL^3/(Eαw)

とすれば、、、

上図のような具合のイメージをすることができる。これによると、ある厚みから先は、変形量が大して変わらなくなるということなので、そのギリギリを攻めよう!という判断が可能になる。因みに、この時は既に使う材料の目星がついているはずである。世の中に出回っている材料には、、特に、板金は、鋼材の厚みがある程度限りがあるので考えやすい。例えば、上の関係式での比較の結果、0.7tと0.8tでは、力に対する変形量は0.1%しか変わらなかったとする。もう一段薄い、0.6tだと、0.7tに対して一気に5%も大きく変形したとする。。。どうやら、今の構造だと、厚みの限界は、0.7tにありそうだ。。。強度、軽さ、流通性を加味して、、よし、07tで行こう!と判断できるのである。

これらは、所詮は、数式の遊びである。

つまり、受験勉強でお馴染みの、「問題を理解して、覚えた知識を当てはめて、その枠組みの中で答えを出す」、、それと同じことである。

よく、社会人になると、、理系の、とりわけエンジニアになると、、学問や数式遊びなんて糞喰らえだ!感覚だ!経験だ!という風潮がある。そういった人たちの設計は、結果的にまともであったとしても、「これは最適なのか?」「それ以外は可能性はないのか?」という問いかけに対して「これが最適ですよ!だって、あれもこうやっているし(=具体例の提示が根拠。その具体例って本当に最適なの?という突っ込みには詰む)」「やってみなきゃわからないです。試作しましょう!(=そんなに予算がないプロジェクトチームはどうすんの?CAEでもやろうかね?)」という具合にしか答えられないのである。

感覚や経験は、もちろん大事である。でも、それが身につくまで若手エンジニアの成長を見守るほど、昨今の開発競争は悠長ではない。また、CAEはデータ作成のためにパソコンの前で四苦八苦することになり、経験豊かな人が使わないと時間がかかってしまう。こんな状況下で、短時間で、見通しのよい設計判断をするためには、数式遊びは極めて有効だと私は思うのである。

後ほど、熱設計に関する数式遊びを紹介したいと思う。。こうした情報発信が、試作前の設計判断の効率化に貢献できれば幸いである。。。では。。

なお、こうした数式の遊びをしたものは、終わった後にフォーマット化しておくと便利です。理由(目的)は下記です。

① 思考の総点検

② 次回以降、一から思考しなくて済む。時間短縮。

③ 入力値をかえたとき、結果の変化を直ぐに見積れる。

フォーマットの作り方は、過去記事を参考下さい。