電気製品の簡易熱設計

電気製品の簡易的な熱設計の方法の一例を紹介したいと思う。自作パソコンの冷却、自分でプロジェクターを作ろうとしている人などは参考になるかと思う。

設計要求事項の定義

物作りをするときは、「何を作りたいのか?」を明確にする必要がある。ここがブレていると、検討が進まず、曖昧な物を作ることになる。企業で言えば、企画書がこれにあたる。ここでは、仮に、下記のように定義する。

・製品サイズ:150×180×100

・熱源数:5 (それぞれA,B,C,D,E とする)

・発熱量P( 以下の通り。添え字は、各熱源を意味する )

 Pa=50W, Pb=20W,Pc=15W,Pd=5W,Pe=5W

・目標温度( 以下。添え字は、各熱源を意味する。この温度以下にすること )

 Ta=60℃, Tb=70℃, Tc=50℃, Td=50℃, Te=50℃

 ※これらは、一般に動作保証温度として、部品の仕様書に記載されています。

・動作環境:5~35℃。

→ したがって、35℃環境で上記目標温度以下にすることを目指す

・部品サイズ:

 A:20×90×5, B:10×20×3, C:15×20×1, D:20×20, E:100×80×1

上記の条件下で、それぞれを冷やす方法を考える。

事始め

まず、問題は、「各部品を目標温度に冷やす冷却の仕組み(システム)」を作ることである。よって、冷却システムの性能を表す「熱抵抗値」で、問題を記述し直す。

知識: 熱抵抗値の定義式 R=ΔT/P

FAN選定

次に、使えそうなファン(扇風機)の選定を行う。そのために、製品内部の熱量を外に放熱するために必要な風量を簡単に算出する。

まずは、製品表面から自然の放熱する量をもとめ、それを内部熱量から引く。それが、放熱すべき発熱量となる。

ここで、下図の表横のような関係式があるので、そっから風量を求める。

風量の単位は、ファンメーカーによってまちまちなので、ここで一覧で分かるようにしておくと便利である。

次に、先に求めた風量の二倍の値が、スペック上の最大風量になるようなFANを探す。

ネットで探すと、上図のように、見つかった。このFANのサイズは、80×80×38である。ない場合は、FANメーカーに問い合わせて、カスタムで作るというのも一手である。( 高いけどね… )

レイアウトを検討しよう

ここで、冷却対象部品とそのサイズ、発熱量、筐体サイズ、必要なFANとサイズが分かってきたので、レイアウト検討を行う。例えば、Excelのセルを揃えて、1マス10mmという具合に仮定して、部品を配置してみる。パズルのような感覚である。今回は、仮に、下図のような感じにしてみた。

向かって左が、製品を上から見たイメージ。右が、右側面から見たイメージである。どうしても製品の下面には基板などがくるので、熱い部品は上になってしまった。向かって上側が吸気面。下側が排気面とする。排気面のすぐ前には、選定したFANを配置し、換気扇のように、空間の空気を外に追い出すように配置した。流路は、主に二つ。間には、流路を明確に分けるために、壁(ダクト)を配置した。

流れ場の計算!通風抵抗と実効風量を求めよう!

ここで、流れ場の計算を行う。筐体の内部に、とのくらいの空気抵抗があるのかを把握するためである。詳しいことは、専門書に譲るが、通風抵抗を求めるのである。通風抵抗Raが求まると、空気の圧力Pと風量Qの間に、P=Ra・Q^2 という関係があり、ここからインピーダンス曲線というものを描くことができる。製品内部にこのくらいの量の風が流れると、空気の圧力はこのくらいになる!というの表す曲線である。

ここに、選定したFANの性能特性であるPQカーブを引き、その接点(動作点)を求めれば、このFANをこのレイアウトの製品に搭載したときの、風量と風の圧力が求まるのである。

入力箇所拡大

出力箇所拡大

今回、通風抵抗を求めるにあたって、並列の流路があったので、まず個別に抵抗を求め、合成則に従って、合成した。

次に、PQカーブとインピーダンス曲線を描く。

内部温度、ヒートシンク必要放熱面積、部品温度を求めよう!

次からは、部品の温度を求めていく。そのために、製品内部温度、部品毎の熱伝達率、部品毎の放熱面積(=ヒートシンクの放熱面積)を求め、最後に部品の温度が導かれる。

という感じで、このレイアウトに、このFANを積んだら、部品の温度がどうなる?というのを予測することができた。

ヒートシンクを積むことを考えると、ちょっと要求の製品サイズには収まらなそうですね。少なくとも、あと、X[mm]は高くしなければいけないかもしれない…などと目算することができる。目標温度にも、後少しという感じですかね。

また、ここで、所望の熱抵抗値になったかどうか?いいかえれば、所望の冷却システムを作れたかどうかを判定すると、下記のようになる。

当初見込んだ部品毎の熱抵抗値に対して、選定したFANや設計したヒートシンクの放熱面積による予想部品温度から求められる現実的な熱抵抗値(=実効熱抵抗値)を比較する。

熱抵抗値は小さければそれだけ優れているから、実効熱抵抗値≦当初見込んだ熱抵抗値 となっていれば合格!(OK)、それ以外なら不合格(NG)とする。

試しに、部品Aの放熱面積を167,877mm2 から140,000mm2 と減らすと、部品Aだけ、NGとなる。

CADやCAEに入る前に、こうした検討をできるようになると、落ち着いて開発に望むことができます。こうしたことが無いと、切った貼ったの試作実験、あれやれこれやれといった検討項目の爆発巻き込まれるのでご注意を!

下記に参考書籍を書いておくので、気になるかた読んでみて、独自にフォーマットを作成して、熱設計をやってみることをお勧めします。

【参考文献】

国峯・中村著、熱設計と数値シミュレーション、オーム社、2015

本日のフォーマットをご要望の方は、連絡ください。

【本日の熱設計手法の手順まとめ】

① 必要情報の収集と整理( サイズ、発熱量、目標温度、使用環境 )

② FANの選定

③ レイアウト検討

④ 通風抵抗と実効風量の算出

⑤ 内部温度、ヒートシンク放熱面の算出

⑥ 部品温度の算出

⑦ 冷却性能が得られたかどうかの判定

⑧ 考察

比較採点による判断方法

 何か同じようなモノを比較して、一つに決めなければならないことはないだろうか?何かを買うとき、何かの契約をするとき、複数提案の中からどれかを選ぶときなどである。多くの人は、人から情報を聞いて、それを頭の中で感覚的に捉え、そして感覚的に判断して、決めてしまうのではないだろうか?

 別にそれでも良いのだが、「しっかり吟味したのか?」と自問したときに、自信をもって答えられるだろうか?私は、難しいと思う。なぜなら、吟味とは複数の事項について丁寧に比較し、判断をし、複合的に判断することだからである。これを頭の中だけでやるのは難しい。そこで、今日は、簡単に比較し、複合的に判定する方法を紹介する。この方法をとれば、吟味した内容が一目になり、比較対象の違いを数値をもって把握できる。

【方法】

1.比較する物を用意する。( ex. デジカメA、デジカメB、デジカメC )

2.その物において、自分が重視する項目を列挙する。

(ex.デジカメなら、画素数、Wifi、F値、ISO感度、自動ピント精度、ズームetc )

3.マトリクスを作成する


4.比較物毎に吟味項目のデータを揃え、記入する。

5.吟味項目毎に順位をつけて点数化( 比較物数3 ⇒ 1位2点、2位1点、3位0点 )

6.比較物毎に総合点を導き、その点数によって判定

上表の「総合」より、最も得点の高いのは、デジカメBとCである。よって、自分が着目してる事項に対してもっとも適切なのは、デジカメBとCということになる。

この方法は、何かを比較しながら選ぶときに、とても有効なので是非使ってみてほしい。なお、自分が直感的にこれだ!と思っていたものが最下位であったとしても、それが欲しいと思う場合は、、、それは、あなたがそれを愛してしまっている、恋してしまっている証拠なので、その力で欠点を補う覚悟があるのならば、そういう決断も良いと思う。。。。というのは、半分冗談で、その感覚は大事です。

それは、吟味項目の中で、あなたが重視する項目に、優先順がある証拠です。そういう場合は、吟味項目に優先度順にランキングをつけてやってください。その上で、優先度1位で、一番となった製品には、優先度数倍率をかける。二番になった製品には、(優先度数/2)倍率をかける。三番になった製品には、(優先度数/3)倍率をかける。などしてみてください。なお、優先度2位の場合は、一番は(優先度数-1)倍率、二番は((優先度数-1)/2)倍率、三番は((優先度数-1)/3)倍率などします。

5’ 吟味項目に優先度をつける。( 同優先度あり )

6′ 吟味項目毎の点数に、優先度倍率をかけて点数化

すると、総合点に入れ替わりが発生します。どうやら、コスパと私のひいき目をを総合的に判断すると、デジカメCが最も良いとなるわけです。自分の気持ちが点数として現れると、決断のし甲斐があります。笑

このように、目に見える形で、吟味することができますので、おすすめです!

尚、使用した点数付けの方法や、倍率のかけ方は、我流ですので、適宜これだ!というのがあれば、独自に考え、やってみてください。

Excelによる回帰分析の方法③ ~重回帰分析:複数のデータを比較する方法~

過去、この記事で、データを分析する方法として「回帰分析」をExcelで紹介した。また、回帰分析により得た傾向の信頼性を示す手法として「相関係数」をExcelで出力する方法も紹介した。そして、データを前にしたときに、まずデータ間の相関性をつかみ、それが強いもののみ回帰分析を行えば、自信をもって解析結果を語れると述べた。

今回は、この考え方を引き継ぎつつ、比較したいデータが複数あるときに回帰分析を行う手法を述べたいと思う。「重回帰分析」をExcelで行う手法である。この手法を会得することで、「欲しい量と、それに関係しそうな複数の要素をまとめた関数式」を得ることができる。例えば、「お店の売り上げと、店舗面積、駅からの近さ、扱っている商品数、開店時間の長さetc」を「お店の売り上げ=α・店舗面積+β・駅からの距離+γ・商品数+η・開店時間」といった具合にである。では、早速始めよう。

Excelでどうやって重回帰分析をやるか?

まず、下準備としてExcelを重回帰分析が使える環境に設定しておく必要がある。過去記事の「Excelによる回帰分析の方法②」を参照されたい。

「ファイル」→「オプション」→「アドイン」→「分析ツール」→「OK」

分析ツールを使えるようにしたら、いよいよ重回帰分析である。下記にフローを示す。

以下、順番に説明する。

まず、データを用意する。求めたい量に対して、関係していそうな要素を何でもよいからあげてみよう。※ 前提として、理論式が特になくデータから見つけるしかないとする。理論式が分かっている場合は、そちらを使って下さい。

ここでは、例として、電気製品の「騒音値と複数のファン」に関する試験データをあげる。下記のようなデータがあったとする。

ここでいう騒音値とは、電気製品から外にでてくる音のことである。一般的に、電気製品は熱を持つので、ファンと呼ばれる回転体( 扇風機や換気扇 をイメージしてください )を実装する。このファンは、その回転数に応じて音が変わる。また、製品内で同じファンを複数使うとも限らないし、同じような位置にあったとしても騒音値が単純に加算されるわけではないので、「製品騒音値とファン回転数」の関係を見つけることは難しいのである。そこで、ここでは重回帰分析による手法でそれを見つけてみたいと思う。

上記データは、ファンが三台搭載されている製品において、各ファンを適当に定めてみて、製品騒音値を測定した物である。

欲しい量と複数データの相関関係を調べる

「データ」 → 「分析ツール」 → 「相関」→「OK」と進む。

下記のような小コマンドが出るので、入力範囲をする。入力は、特に変わったことをする必要はない。表を表題まで含めてマウスで覆って(=ドラッグして)あげればよい。その際、下記の小コマンドの中位にある、「先頭行をラベルとして使用」にチェックをいれると、後で出力される相関データが見やすくなる。出力オプションは、相関データを出力する場所を指定できる。下図のように何もしなければ、新しいシートに出力される。場所を指定したい場合は、下記の「出力先」にチェックをいれて、出力先のセルを指定する。

騒音と回転数の生データに対してExcelの分析ツールで相関を調べると、下記のような表が、自動的に出力される。

赤枠内が、データ上の騒音値に対する各ファンの相関係数である。これをみると、ファン2と騒音値の関係性が確実(≧0.7)にあり、ファン3は無視できない程度関与(0.3~0.7未満)しており、ファン1はほとんど関与しない(≦0.3)という結果になった。

重回帰分析にかける、結果をまとめる

ここで、以降の重回帰分析を行うわけだが、二つの方針をとることとする。今、上記の結果で、相関係数0.7以上の物はファン2のみである。言い換えれば、ファン2が、製品騒音値を支配的に決めていると分かる。そこで、方針の一つは、「製品の騒音値を決めるのはファン2であり、その回転数と騒音の関係をつかめば十分である」という仮説の元、「騒音値とファン2の回転数」に対して回帰分析を行う。

もう一つの方針は、全て同時に回帰分析を行うである。確かに、相関係数だけをみると、ファン2が突出しているが、ファン1も2も音源であることに変わりはない。よって、それを知っていながら無視することはできない。よって、一緒に回帰分析をしようという物である。

あとで、この二つの結果を比較してみる。やり方としては、時間と要素数と相談して前提さえしっかり定義しておけば、どちらの方針を採用しても良いと思っている。筋が通っているからである。

【方針1】:騒音値とファン2の回転数の関係

この結果を、入力:回転数[rpm]、出力:騒音値[dBA] として整理しておく。こうしておくと、後でデータを元にした予測をすることで可能になる。

※ K26は、私が使用したExcelシートにおいて、ファン2回転数の記入箇所(上図の青枠内)のセルが、たまたまK26であっただけである。

【方針2】:ファン1~3のすべての重回帰分析

まず、先の相関係数と同じように、「分析ツール」を立ち上げ、「回帰分析」にチェックを入れる。

「OK」を押すと、範囲指定をする小コマンドが立ち上がるので必要な範囲を記入する。

入力範囲(Y)には、欲しい量(=パラメータを変えて予測したい量 )を記入する。出力範囲(X)には、要素となるパラメータをまるごと指定する。ラベルごと範囲指定し、中段にある「ラベル」にチェックを入れておくと後が楽である。こうして出力された結果が下記である。

この結果より、騒音値(=欲しい量、予測しい量)と各ファンの回転数をつなぐ式が記述できる。上図の色んな情報を無視して、赤枠で囲ったとこだけ着目する。この情報から関数式を記述すると、下記のようになる。

騒音値[dBA]=0.000689×(ファン1回転数)+0.004116×(ファン2回転数)+0.001019×(ファン3回転数) – 3.06

これも、入力:ファン回転数、出力:騒音値 として整理しておく。

では、ここで【方針1】と【方針2】の結果の違いを考えてみる。方針1は、「ファン1と3の回転数は何でもよく、ファン2が製品騒音値を決めるのだ!」というもの。方針2は、「ファン1~3の全てが製品騒音値に影響するのだ!」というものである。

・テスト1:ファン1=ファン2=ファン3=8000rpm

・テスト2:ファン1=4000,ファン2=8000,ファン3=4000

・テスト3: ファン1=10000,ファン2=8000,ファン3=4000

・テスト4: ファン1=4000,ファン2=8000,ファン3=10000

テスト1より、全ての回転数が同じ場合は、確かにファン2の値をみれば、1dBAほどの違いしかない。よって、ファン2の回転数をみればおおよそ製品騒音値が分かると言えそうである。

しかし、テスト2をみると、ファン1や3を思い切り回転数を下げてみると、8dBA弱まで結果に差が出てしまう。ただし、それがファン1や3をそれ以外の任意の数にしてもある程度保たれるのならば、ファン2の回転数から予測された騒音値にその補正数を加えればよいので、方針1は使えるかな…と思ってテスト3や4をしてみた。結果、値が1.6~3.6dBAと大きくバラついたので、補正は難しそうだと分かった。

また、テスト2と3は、騒音値との相関が最も少ないと思われてたファン1の回転数を変えたのだがそれでも4.2dBAもの差が出てしまった。このことから、相関係数が0.3未満だとしても、明らかに所望量に影響すると考えられる要素の場合は、重回帰分析にかけた方がよいと分かる。

※ 今回の分析は、回転数が8000rpm以上に対して求めたものである。それに対して、テストでは回転数4000rpmなど逸脱した値も使っている。相関係数が小さいのに、結果に大きく反映されている場合は、予測に使用したデータ範囲外の可能性があるので、別途、興味のある方は調べていただきたい。

まとめ

・予測したい量に対して、複数要素の関与が気になる場合は、重回帰分析しよう!

・Excelの「分析ツール」で簡単にできます。

・パラメータ数が多い場合は、相関係数の大小で回帰分析数を減らそう。

 しかし、明らかに関与すると思う場合は、相関係数が小さくても分析にかけよう。