固有周波数の簡単な見積もり

電気製品の設計をしているとき、「この製品の固有周波数は、どのくらいだろう?何かの振動の周波数に近くて、共振したりしないかな?」と疑問に思うことがある。

特に、スピーカーを搭載していたり、振動する環境下で使われる製品ならば、尚更である。そんなとき、設計した製品の固有周波数を概算する、多分有効だと思われる簡単な方法を思いついたので、ここに記すことにした。多分、振動体を専門に扱っている技術者ならば、常識も常識だと思う。だって、高校物理程度の知識だから。。

【設計中の製品の固有周波数を概算する方法】

まず、製品の固有周波数とは何か?を少し考えてみる。

製品には、沢山の部品が使用されており、その全てに固有の周波数がある。製品の周波数分布は、それらの各部品の周波数分布の合成である。さて、その製品は、一般的には、ある平面に乗せて使用することが多い。ということで、一般的に製品は、平面との接触面に、「ゴム脚」などの弾性体を配置する。このゴム脚が、製品の自重で微妙に沈み込み、製品の位置が安定する。これは、重りを吊るしたバネが安定する現象と同じである。重りを少し押し下げ、手を離せば、バネは安定位置を中心に上下に振動する。このことから、一般的な製品の振動現象は、まず、外界の物品と一番に接触する弾性体に着目し、その固有振動を考えれば良いと分かる。

では、早速考えてみる。今、下記のような電気製品があるとする。

図1. プロジェクタを平面に置いた状態

先ほど説明した、ゴム脚が、微妙に歪むので、それを誇張して表現してみる。

図2. ゴム脚が製品の自重で変形しつつある様子のイメージ

ここで、運動方程式を立ててみる。運動方向としてZ軸を図2のようにとる。製品重量をM[kg]、微小変形量をz[m]、ゴム脚のバネ定数をK[N/m]とする。

・・・(1)

今、着目しているのは、ゴム脚の微小な弾性なので、場の力Mgの影響は小さいから、無視することにする。すると、

・・・(2)

となる。両辺をMで割ると、、

・・・(3)

となる。ここで、(K/M)は、固有振動数ω[rad/s]の二乗である。ωは、ω=2πf という関係式があるので、、、

・・・(4)

と言う具合に、固有周波数f[Hz]の式が導ける。ところで、図2において、ゴム脚が自重で変形しきったときの変形量をL[m]と置く。設置面からの反発力(垂直抗力)をN[N]とすると、つり合いの式は、、

N=Mg-KL

・・・(5)

となる。ここで、製品が振動するときのことを考える。ゴム脚が変形する瞬間では、垂直抗力N=0と考えられるので、

Mg=KL

・・・(6)

とできる。(6)式から、

・・・(7)

と近似できる。この式を、(4)式に代入すると、、

・・・(8)

となる。電気製品の設計現場では、一般に、単位は、mよりも、mmをよく使うので、単位変換をすると、、

L:ゴム脚の変形量[mm]

・・・(9)

と言う具合に、固有周波数が求められる。(9)をみると、製品重量Mやバネ定数Kが消えている。従って、単純に、ゴム脚一つの変形量Lのみに着目するだけで、製品という系の固有周波数を概算することができる。

ここで、こんな近似使いまくって、計算結果が信頼できるのか?と思われるかもしれないが、、ここでは、「想定使用(試験)下の振動条件と、計算で求めた系の固有周波数が近いかどうかを知り、設計方針を立てることを目的としているので、近似計算の結果で十分」だと私は思っている。設計方針というのは、例えば、「固有周波数を概算して、それが振動条件の周波数に近ければ、、ゴム脚の硬度、形、大きさを変えたりして、Lを調整しよう。試作のときに検証できるように、複数パターン作っておこう」という思考のことをさす。

電気製品の設計の現場において、製品の固有周波数は、恐らく、やってみないと分からないという感じが多いと思う。しかし、やってみた結果、悪い方に転んで焦るよりも、ざっくり予測して、複数パターン準備しておく方が、良いと思うのである。是非、活用に向けて一考いただけたらと思う。

【本日の動画】河岸段丘から相模川に流れ落ちる水と音

滝とは言いませんが、激しい流れです。その姿を見て、音を聴いていると、雑念が消えていくような、そんな感じがします。自然に触れることの素晴らしい効果の一つだと思っています。

数式での遊び2(熱設計版)

今日は、前回に続き、数式の遊びを紹介する。テーマは、熱設計である。

熱設計とは、「製品開発において、物を作る前の構想時点で、熱源が冷えるような機構を考えること」を言う。この概念を知らず、モノが出来てから、筐体に孔をあけたり、適当なヒートシンクを持ってきて取り付けたりでは、昨今の高発熱密度な製品や部品を冷やすことは不可能である。

一重に熱設計と言っても、やり方は、問題設定によって様々である。

Q1:筐体内に、発熱量P[W]の熱源がある。これを何か特別な機構で排熱する必要があるか?

Q2:Q1で排熱する必要がある場合、どれだけの流体を当てればよいか?

Q3:高発熱密度な部品がある。この熱をある領域まで広げたい。どうする?

Q4:ある熱源がある。風が一方向から吹いている。これを冷やすには、どれくらいの空間と風量、ヒートシンクがあればよいか?

などなどである。

本日は、Q4について、一つのアプローチ方法を紹介する。大学、大学院で研究活動をしたことのある方は、必ず、最適化問題を何らかの形で触れたと思う。

本日紹介するQ4へのアプローチを理解した上で、是非、この方程式を、特定の量に対して最適化する方法を考えてみて欲しい。。それはきっと、あなたが真のエンジニアや研究者になったときに、問題を解決する素晴らしい力の源になると思うからである。また、是非、私にもそれを教えて欲しい。

【問題Q4】

ある熱源がある。風が一方向から流れている。この時、熱源を冷却するには、どれくらいの空間とヒートシンクがあればよいか?ただし、熱源の熱は、ヒートシンクに全て移動できるとする。また、ヒートシンクのフィンの加工上の制約条件は、無視しても良い。

********************************************************************

まず、条件を整理、仮定してみる。

◎ 熱源 ⇒ 発熱量 P[W]、目標温度 Tt[℃]、周囲環境温度 Ta[℃]

◎ 風 ⇒ 風量 Q[m3/min]

◎ 空間サイズ ⇒ 流路サイズと考える。

 ・流路幅 W[mm]

 ・流路長 L[mm]

 ・流路高さ H[mm]

◎ ヒートシンクサイズ

 ・FIN幅 ω[mm]

 ・FIN間距離 δ[mm]

 ・FIN数 n[枚]

 ・FIN長 L*[mm]

 ・FIN高さ H*[mm]

次に、これらを図示してみる。問題は、情報の仮定と整理をし、図示することで、より理解が深まる。これが「数式遊び」の極意であると、私は思っている。

図1. 熱源と周辺空間(流路)の関係イメージ

ここで、問題で問われている、ヒートシンクについて考えてみる。ヒートシンクは、流路の中に位置する部品である。また、ヒートシンクは、流路に対して水平かつ短冊状にFINが配列される部品である。よって、例えば、下図のように仮定してあげれば良い。つまり、流路をヒートシンクのFINで刻んでやるのである。

図2. 流路にヒートシンクを配置したイメージ

図2では、流路長L、流路高さHが、それぞれ、FIN奥行きL*、FIN高さH*と等しいとした。

さてこのように図化すると、例えば、以下のように、「熱源情報、寸法情報、風量」に関する関係式 を立式することができる。

1). ヒートシンクサイズに関する関係式

  • 放熱面積:S = n × ( 2HL ) [mm2] ・・・①
  • 包絡体積:V = WH = { nω + ( n+1 )δ }H [mm2] ・・・②

FIN数 n[枚], フィン高さH[mm], FIN奥行き(=流路長)L[mm]

ヒートシンク幅(=流路幅)W[mm], FIN幅 ω[mm], FIN間距離 δ[mm]

2). 熱伝達率hm[W/(m^2・K)]の定義式 と熱抵抗値R[K/W] の関係

  • hm = P/{S・(Tt – Ta)} = P/(S・ΔT) [W/(m^2・K)] ・・・③
  • R = (Tt – Ta)/P = ΔT/P [K/W] ・・・④

発熱量P[W], 目標温度Tt[℃], 周辺空気温度Ta[℃]

hm = 1/(S・R) [W/(m^2・K)] ・・・⑤

ここで、放熱面積Sの単位は、mm2 とすることが多いので、⑤式もそのようにしておくと便利である。つまり、

hm = 10^6/(S・R) [W/(m2・K)] ・・・⑤’

である。

なお、この式において、風が熱を空気中に移動させる能力である熱伝達率が分かっていれば、どれくらいの放熱面積が必要かが分かる。⑤’式を変形すると、、

S = 10^6/( hm・R ) [mm2] ・・・⑥

となる。少なくとも⑥式以上の放熱面積を取れば、よいと目算ができる。

  • S ≧ 10^6/( hm・R ) [mm2]・・・⑦

3). 強制熱伝達率hmf [W/(m^2・K)] の関係式

  • hmf = 3.86×(U/L)^0.5 [W/(m^2・K] ・・・⑧
  • Q = AU [m^3/s] ・・・⑨

⑧式は、熱設計関係の書籍でよく登場する式である。論文などを見ると、条件別に色んな式があるので、適宜参照してほしい。。が、熱設計指針をざっくり立てるのが目的なら、、正直、この関係式だけ覚えておけば良い気もする。

⑨は、流体力学の初めの方に登場する、連続の式である。流路内において、流路断面積A[m2]と流速U[m/s]の積が一定というものである。⑧式に⑨式を代入すると、、、

  • hmf = 3.86×{ Q/(AL) }^0.5 [W/(m^2・K)] ・・・⑩

 風量 Q[m3/s], 流路断面積 A[m3], 流路長L[m]

となる。ここで、流路断面積Aは mm2で、風量Qは m3/min で考えることが多いので、これをQp[m3/min]として⑩式に代入する。

  • hmf = 3.86×{ Qp/( 60AL )×10^8 }^0.5 [W/(m^2・K] ・・・⑩’

 風量Qp[m3/min], 流路断面積A[mm2], 流路長L[mm]

以上の式から、⑦式と⑩’式を、hm = hmf とし、さらに⑦式に①式を代入すると、、「熱源情報、寸法情報、風量」に関する関係式 が導かれる。

S ≧ 10^6/[ 3.86×{10^8×Qp/(60AL) }^0.5 ]

2nHLR ≧ 10^6/[ 3.86×{10^8×Q/(60AL) }^0.5 ]

式を整理すると…

  • QL×(nHR)^2/A ≧ 6,350 ・・・⑪

となる。ここでさらに、流路断面積A = (n+1)δ×H なので、⑪式に代入して整理すると、、

  • QHL×(nR)^2/{δ(n+1)} ≧ 6,350 ・・・⑫

となる。

後は、これに確定している量を代入して、欲しい未知量を求めれば良い。

例えば、良く開発現場で、この熱源を冷やすのに必要な空間とヒートシンクサイズを見積れと言われる。驚いたことに、使用できるFANが決まっていることもある。この場合、仮に、Q = 0.1m^3/min, R =1K/W とすると、、⑫式は、

HL×n^2/{δ(n+1)}≧63,500

を満たせば、何でも良いとなる。。さて、あなたは、これにどう答えるであろうか??変数は、4つである。如何にすれば、最適といえるであろうか??

定石は、変数の変域を定義するのである。。。が、開発現場では、これを否定されることの方が多い。理由は、(熱設計者が)変域を定義し、(承認者らが)それを許容して、最悪の条件が導かれたときに、(承認者らが)プライドが傷つくのを恐れてGoサインを出せないからと、かねがね感じている。話を戻して、変域を定義してみる。

例えば、

・1 ≦ H ≦ 30mm

・1 ≦ L ≦ 50mm

・1 ≦ W ≦50mm

・ω≧0.3mm

・δ ≧0.6mm

・n > 0

とする。Wは、ωn+δ(n+1)という具合にFINとの関係が深いので先にこちらを考える。W≦50mm より、、

0.3n+δ(n+1) ≦ 50mm 

である。δ=0.6mmとすれば、0.3n+0.6n+0.6=0.9n+0.6≦50 なので、

n ≦ 54.8 ( ただし、δ = 0.6mm, ω = 0.3mm )

ここで、HとLの関係に式を詰めていく。

HL×54^2/{0.6(54+1)}≧63,500

↔ HL≧ 718 (1≦H≦30, 1≦L≦50)

このことから、最小のHとLは、HL=718の境界上の任意の数で良いので、、例えば、(H,L)=(14.36, 50) となる。

まとめると、熱抵抗値R=1K/W、風量Q=0.1m3/min の風が流れる流路において、フィン間距離δ=0.6mm、フィン幅ω=0.3mm、流路幅W=50mmとして、フィン数n=54枚 とすれば、、最小のフィン高さ(=流路高さ)H=14.36mm、最小のフィン奥行き(=流路長)=50mm と算出できる。。(あれ、あってんのか)。。色々課題を思いつきましたが、、、今日はここまでにしたいと思います。。

では。。

【本日の動画】相模川の水の煌めき

激しい流れに、太陽の光が反射し、キラキラ煌めいております。見ていると、雑念が払われて、スッキリしてきます。

数式での遊び

機構設計者として、日々仕事をしていると、色んな問題に直面することになる。

Q: こんな構造は、どうやって作るのか?

  • 材料は?
  • メカニズムは?
  • 強度は?
  • 時間変化は?
  • 入手性は?
  • コストは?
  • 加工性は?
  • 組み立て性 は?[量産性]
  • 法律は?
  • 管理は?
  • その他…

熱設計者なら、

Q: この筐体サイズの中に、こんな発熱部品があるのだが、部品は使えますか?

  • 筐体サイズは?
  • 部品サイズは?
  • 部品毎の発熱量は?
  • 部品毎の目標温度( = 動作保証温度 )
  • 使用環境は?
  • 騒音値の制限はあるか?(=強制空冷ができるかどうかに関わる)[静音性]
  • それで冷えるの?[冷却性]
  • もっと小さくできないの?[小型化・薄型化]
  • もっと軽くできないの?[軽量化]
  • 金属なら回路部品との絶縁を取らないといけないけどどうすんの?[絶縁]
  • コストは?もっと下げられないの?[ロウコスト]
  • 加工性は?
  • 組み立て性は?
  • 入手性は?
  • 法律?
  • 管理?

などなどである。

熱設計の場合は、開発開始時点で、筐体サイズが決まっていなかったり、内部に搭載する部品の種類、数、サイズ、発熱量が決まっていなかったりする中で、常に、上記の質問を問われ、必ず「最適か?」という質問が副えられる。しかも、要求事項の全体像が分かっていない無能な企画者が多いと、設計者が見積もりを出すために「条件設定、定義」をすることすら否定される。。。

この状況に対して、一般的な理系の大学教育を真面目に受講した者ならすぐに分かるが、「条件設定が禁止された関数の最適化は、不可能」なのだが、そこが分からないのである。勉強はしっかりしましょう。思うだけで、技術の積み上げを超越した物ができるほどの技術を、我々人類はまだ手にしていないのですから。。

さて、前置きが長くなったが、、機構設計者は、上記のような多くの質問に常に答えなければならないのである。これらは、侃々諤々(かんかんがくがく)とした議論を続けていても、全く答えは出ない。計算をするか、実験をしてデータを元に推論をしていくかでしか、答えは出ない。実験は、基本的に試作をして行うので、お金と時間がかかる。いずれも有限なものですから、大切にしなければならない。そこで、基本的には、計算をして、試作をするにたる予測をするのが重要になってくるのである。。

では、どうやって計算をするのか??

一般的な強度計算に対しては、材料力学の教科書を引っ張り出してきて、モデリングしようとしている形状を角柱や円柱に簡易化し、その上で、変形や強さの関係式、安全率の概念を適用すれば、おおよその指針が立つ。その計算で強度がNGならば、CAEをやっても恐らく強度NGで、試作をしても同じである。

例えば、ある部材の変形量に関する議論においては、一つの関係式を元に、結構な設計の見通しを立てることができる。

【最大変形量の関係式】

上図は、材料力学の教科書やHPをみれば直ぐにでてくる情報である。

δ:最大変形量、L:材料の長さ、E:縦弾性係数(材料で決まる)、I:断面二次モーメント、F:付加する力、w:材料の幅、t:材料の厚み、kやαは係数。この係数も、前述の教科書やHPを参照すれば、直ぐに出てくる。正の値である。

設計する場において、材料の厚みtを何ミリにすればよいか?という議論があったとする。この時、例えば、上の式において、L,w,E,Fを固定すれば、、、

という関係式に整理できる。A=kL^3/(Eαw)

とすれば、、、

上図のような具合のイメージをすることができる。これによると、ある厚みから先は、変形量が大して変わらなくなるということなので、そのギリギリを攻めよう!という判断が可能になる。因みに、この時は既に使う材料の目星がついているはずである。世の中に出回っている材料には、、特に、板金は、鋼材の厚みがある程度限りがあるので考えやすい。例えば、上の関係式での比較の結果、0.7tと0.8tでは、力に対する変形量は0.1%しか変わらなかったとする。もう一段薄い、0.6tだと、0.7tに対して一気に5%も大きく変形したとする。。。どうやら、今の構造だと、厚みの限界は、0.7tにありそうだ。。。強度、軽さ、流通性を加味して、、よし、07tで行こう!と判断できるのである。

これらは、所詮は、数式の遊びである。

つまり、受験勉強でお馴染みの、「問題を理解して、覚えた知識を当てはめて、その枠組みの中で答えを出す」、、それと同じことである。

よく、社会人になると、、理系の、とりわけエンジニアになると、、学問や数式遊びなんて糞喰らえだ!感覚だ!経験だ!という風潮がある。そういった人たちの設計は、結果的にまともであったとしても、「これは最適なのか?」「それ以外は可能性はないのか?」という問いかけに対して「これが最適ですよ!だって、あれもこうやっているし(=具体例の提示が根拠。その具体例って本当に最適なの?という突っ込みには詰む)」「やってみなきゃわからないです。試作しましょう!(=そんなに予算がないプロジェクトチームはどうすんの?CAEでもやろうかね?)」という具合にしか答えられないのである。

感覚や経験は、もちろん大事である。でも、それが身につくまで若手エンジニアの成長を見守るほど、昨今の開発競争は悠長ではない。また、CAEはデータ作成のためにパソコンの前で四苦八苦することになり、経験豊かな人が使わないと時間がかかってしまう。こんな状況下で、短時間で、見通しのよい設計判断をするためには、数式遊びは極めて有効だと私は思うのである。

後ほど、熱設計に関する数式遊びを紹介したいと思う。。こうした情報発信が、試作前の設計判断の効率化に貢献できれば幸いである。。。では。。

なお、こうした数式の遊びをしたものは、終わった後にフォーマット化しておくと便利です。理由(目的)は下記です。

① 思考の総点検

② 次回以降、一から思考しなくて済む。時間短縮。

③ 入力値をかえたとき、結果の変化を直ぐに見積れる。

フォーマットの作り方は、過去記事を参考下さい。

冷却設計(熱設計、放熱設計)

今日は、「部品を冷やす」ということについて、一つの体系的な概念を紹介したいと思います。

いきなりですが、「小型製品」という要望は、その潜在的な魅力のため、エンドユーザー様たちの本意とは別に、常に開発者らに求められる事項です。そして、この要望に開発者が向き合うときに常に困るのは、「部品の冷却」なのです。

例えば、

・必要機能部品は、基板上に配置できた。でも、製品内で冷えるだろうか?

・要求筐体サイズに必要要素部品を詰め込むと、もうギッチり。これで冷やせるのだろうか?

・新しいデバイスの性能検討用の治具を作ったのだけど、風を当てるべきか、ヒートシンクを付けるだけで良いのか?どのくらいの風を当てればよいか?ヒートシンクのサイズは??

・製品をコレだけ小さくしたら、部品の温度はどうなる?

・騒音値は、どうなる?

これらを15年~20年前のように、とにかく試作品を作ってから、熱対策を繰り返すのでは、冷却効果と開発速度の点で対応出来ません。というのも、熱対策とは、いわば付け焼刃のような物であり、繰り返し熱対策の試作と評価に膨大な時間がかかるからです。また、冷却は、風の流れや筐体サイズと密接に関わっているので、製品そのものの設計変更も余儀なくされ、さらに膨大な開発時間とコストがかかってくるのです。そこで、製品の試作品を作る前の「紙上試作」や「解析」によって、「この筐体に、これらの部品や熱源をこのように配置し、こういった冷却機構にすれば、部品や熱源はこの環境でこのくらいの温度になるはずだ!」と見積もりを立てることが必要になるのです。これが、熱設計とか、冷却設計とか言われる概念です。

しかし、冷却設計者は、育ちにくいです。それは、思考範囲が多岐にわたることと、現象が感覚的につかみにくいことに加え、会社内で製品が成立するか否かの重要判断を全ての部隊から求められるので、担当者が潰れやすいからです。また、これを危惧して分業制を導入すると、今度は自分の目的を見失ってしまい、冷却設計に関与したけど全く身につかなかった…となりがちだからです。

そこで、本日は、冷却設計の概念を、私なりに一つの体系図にまとめてみました。このブログを読まれた方が、ご自身の冷却業務において、どのような個所をされているのか?を考える、一つの参考になれば幸いです。「参考」とう感じに表現を一段落としたのは、開発現場毎に要求事項が異なり、それに伴って冷却のアプローチも変わるので、「答え」とはいいきれないと思うからです。。とはいっても、それなりに一般化しているつもりですので、参考にしていただけたらと思います。

図1. 冷却設計体系図

上図を見ていただくと、全部で四色に分かれていることが分かると思います。

赤:熱源(敵)と製品仕様(筐体)の関係を掴むステージ(★)

緑:冷却機(FAN)や放熱器(HEAT-SINK)を搭載するかどうかを決断するステージ

黄:決断後の指針を立てるステージ

青:風を当てる場合の、具体的な冷却構想をするステージ

あなたが、機構設計者であるならば、図1に書いてあることは、全て出来なくてはなりません。でなければ、構想が進まず、解析ソフトの前で四苦八苦することになります。そして、運よく答えが見つかったとしても、企画者や思い込み発言の多い立場の上の人たちの要求に、一つの判断軸をもって回答できなくなります。

立場の上の人間は、こと熱に関して感覚的に質問を投げかけるくせに、担当者が感覚的な回答をすると、待ってましたとばかりに罵倒する性質があります。要は、彼らは、心の底では判断から逃げたいのだが、立場上逃げられないので、担当者に自信をもって判断できる材料を提供してもらいたくて、喚きたてるのです(※)。こんなとき、「ある物理法則に則ってこう予測できるからいけると思います。いかがですか?ご心配なら、解析(1W)や試作(1~7W)をするのでお時間いただきたいです」と提案できるのです。

※ どの組織にも、「「~だろう・と思う・と考えます」じゃダメなんだよ、「~できる」っていえよ」という困った人がいます。この世の中に、断言できることは、ほぼ無いのですが、こういうことを言う人は、それが分かっていません。人が言う「~できる」は、過去の経験から予測した結果を、本人が高く信頼しているにすぎません。つまり、「~できる」という例外は、そう信じる思考くらいです。さて、計算も、解析も、試作も、全て予測するための手段にすぎません。そこから得られる結果は、「~だろう」です。上記のような困った人には、どこまで予測をすれば、その人が高く信頼できるのか?を確認しましょう。計算結果で判断できるのか?解析結果で判断できるのか?試作をしないと判断できないのか?どんなレベルの試作をしないと判断できないのか?。。でないと、予測損をして疲れてしまいます。無駄な業務です、、正直に言いましょう。全部やったら、死にますよ。管理職の方、、全部やらせたら、部下がつぶれますよ?いいのですか?パワハラ防止法で訴えられますよ?そしたら、あなた社会的に抹殺されますよ?

なお、試作しないと判断できないという人がいたら、ちょっと要注意です。その人は、「判断する見識を持ち合わせていない」であったり、「計算や解析を軽視し、試作&対策のループをやろうとしない担当者を職務怠慢であると責め」たりするので、話が噛み合いません。まず、味方を増やし、その上で会議を開き、判断の仕方を取り決めましょう。( 社内でその分野の識者を集め、合議の上判断するなど。 )

話を元に戻して、冷却設計者は、図1が理解できていなければなりません。回路設計者も、熱源を選定し、配置するエンジニアですから、熱設計ができなければ、自分の排便をかたずけられない人間と同じなので、やはり未熟者です。よって、図1を理解し、運用できるようになってほしいと思います。商品企画者は、最低でも「赤~緑」までは出来て欲しいです。それは、「冷却の観点から実現可能性のある小型製品サイズ」を見積ってほしいからです。この観点がないと、馬鹿な企画をすることになります。例えば、「”タバコサイズの世界最高性能のスパコン”が欲しいな。自社の事業は赤字だし、このくらいのモノ作らなきゃ解散だわ。いっちょ、設計部に要求書を出すかな。」という感じです。最先端のスパコンの膨大な発熱量を知れば、タバコサイズの筐体で放熱不可能なことは直ぐに分かります。営業の顔色を伺う仕事が大変なのはわかるが、それが二義的なものだといい加減に気が付き、本来の商品企画に知能を使って欲しいものです。

最後に、赤の(★)について、補足します。熱を持った部品や、筐体の各面から自然に放熱する熱量を求める方法についてです。物理的には、自然対流熱伝達率[W/(m2・K)]を求めます。熱設計関係のいくつかの書籍によると、下記の関係式が提唱されています。

hm=2.51K(ΔT/L)^0.25

K:形状係数( 鉛直板: 0.56, 平板上に熱源: 0.54, 平板下に熱源:0.27 )

ΔT:外気と、部品(又は、筐体)表面温度の差

L:代表長( 鉛直板:高さ, 平板:短辺長 )

図1ができると、ある発熱量の熱源を仮想の流路に入れて、その両端面にメッシュをはり、片方のメッシュの内側にFANを配置して、流路内の空気を換気させるように冷却したとき、部品温度がどのくらいになるかなどを見つめれるようになります。ヒートシンクを搭載したときや、流路を拡大させた時にどうなるかも予測できるようになります。解析ソフトは1Wはかかります。簡易計算は、一日でできます。これは、設計の際に使わないわけにはいかないでしょう。。

因みに、上図を参考に独自の数式の組み合わせ方法を見つけたら、それをEXCELなどでフォーマット化しておくことをお勧めします。自分の理解が深まるとともに、以降、必要な数値を入力するだけで、必要な結果を得られるからです。

では

【本日の写真】ジョウビダキ

今年も日本海を越えて、渡ってきてくれました。とても可愛らしい小鳥です。

野鳥が来られるような美しい国に、野鳥が暮らせるような美しい地球にするために、少しでも貢献できたらと思うばかりです。

ヒンジ機構の設計

本日は、トルクヒンジ機構の設計について考えたいと思います。

1.トルクヒンジ機構とは?

 トルクとは、「力のモーメント」のことです。ヒンジとは、蝶番のことです。例えば、ドアを開く根元についている金具がそうです。この機構がないと、ドアを開くことは出来ません。ここで我々が行う動作を「開く」を表現しましたが、基礎物理学のような用語でいうと「回転運動させた」です。ここを理解できるかどうかが、重要です。

◎ドアを開く= 壁についた板を蝶番を回転軸として回転させた

 さて、上記までの説明だとヒンジは分かりますが、トルクヒンジがわかりません。「力のモーメント+ヒンジ」?ドアを開く際の回転が、力のモーメントで記述できるから、という意味ならば、あえて力のモーメントなんといわなくていいじゃないか!そう、あえていうには理由があります。これ以上は表現上からは見えてこないので、一般概念を言ってしまうと、「任意の角度で自由に止められる」ヒンジ機構のことを、トルクヒンジ機構といいます。

◎ トルクヒンジ機構 =任意の角度で自由に止められるヒンジ機構

2.トルクヒンジ機構の実用例

 「設計とは真似ること」という格言を、しばしば耳にします。確かに、機構を組み立てていく際に、「知識」がなくて進まないことは多々あります。そんなときに参考とするのが、公知となっている技術です。特許、実用新案、意匠、製品を参考にします。ここでは、トルクヒンジ機構として、我々が普段よく見る物を数点、列挙します。

例) ドア、ノートパソコン開閉機構、乗り物の椅子後部に収納されているテーブル、その他開閉機構

3.トルクヒンジ機構を考える事始め

 まず、いかなる設計も、実現させたい事項を明確にする必要があります。その上で、回転軸を設けて回転させる機構が必須であるのならば、トルクヒンジ機構の構想を開始する。いきなり、トルクヒンジ機構という概念があって、それを物にくっつけるという発想では、上手くいかないことが多いです。

◎ トルクヒンジ機構の必要性を考えたか?

◎ 必要な場合、何処に設置し、どのように使うつもりか答えられるか?

答えられない場合は、構想設計をいったんストップした方が良いです。トルクヒンジ機構は、やや複雑な機構なので、いったん開発を進めると、結構パワーがいります。

4.トルクヒンジ機構に必要な機構を考える

 ここでは、具体的にどのような構造が必要かを述べます。トルクヒンジ機構は、「トルク機構」+「ヒンジ機構」で成り立っている。従って、各部分に対応する構造を明確にすればよい。。。その前に、トルク部とヒンジ部を再定義しておく。

◎ トルク機構 = 任意の位置で回転を止める機構

◎ ヒンジ機構 = 回転軸に対して剛体を回転させる機構

上の定義を見て、その横に、具体的な構造が描けるようならば、次にその二つの機構を統合させることに思考を移せる。しかし、描けない場合は、上記(2)で言ったように、公知例を参考にするか、定義を自分が完全に構造が理解できるところまで分解する必要がある。

◎ 機構がイメージできないときは、完全に理解している(=絵に描ける)レベルまで要素に分解したり、公知例を参考にしたりしなければならない。

さて、ここまで言っておいて、トルク機構とヒンジ機構を見てみると、私はトルク機構のイメージがわかない。なぜならば、回転運動を止めると言っているがどのような機構の回転運動なのか、分からないからである。つまり、ここでいうトルク機構は、ヒンジ機構に依存するので、ヒンジ機構だけは考えることが難しいのである。。私には。。。

例えば、下図のようにイメージしてみる。

回転軸に対して剛体を回転させる機構…

こうすれば、シャフトに回転体(剛体)をはめ込み、ストッパーで止めることで、機構が成立する。

ここで、もし「何処に設置する?」と考え、それが製品に搭載するということであれば、シャフトに剛体が一つ追加されることになる。

ここまでできれば、先に定義したヒンジ機構の基本構造が明確になる。高校の物理の知識しか使っていない。

回転機構をイメージできたので、次は、トルク機構を考える。トルク機構は、剛体を任意の角度まで回し、手を放すとその場で回転が止まる機構である。これは、どう考えればできるであろうか?

問題:回転しているモノを止めるには?

運動している物を止める最も基本的な考えは、「運動方向に壁を立てる」である。相撲の力士が、相手の突進を体で受けることをイメージしてもらえればよい。シンプルな方法で、回転方向の力に壁が耐えられれば強度的にはOKで、後は任意角度で壁が立つような機構を考えればよい。他にはないか??

日本の剣術の極意:真剣白刃取り は、何故、切り下してくる刃の運動を止められるのか??やっていることは、刃を両手で挟んでいる。回転方向に対して垂直の方向から力を加えて止めている。何故止められるのか?それは、摩擦力である。

運動する物体があって、それが摩擦をもつ面に接していると、その接触面を介して物体には、運動方向に逆らう力が働く。高校物理で、μ×N で記述された摩擦力である。摩擦係数と垂直抗力が大きければ大きいほど、運動を止める効果が高くなる。ここで摩擦係数は手のザラツキであり、垂直抗力は刀を挟むのに要した力である。回転運動を、この摩擦力で停止させる機構は、例えば車(自転車のブレーキをみてほしい)を見ていただければ顕著である。

以上、二つの回転運動する物を止める方法を考えてみた。私は、前者の壁を立てる機構は、「任意角度に追従して壁が飛び出る」を考える労力がやや苦労なのでで、思考の楽な後者を考えてみたいと思う。つまり、「摩擦力で止める」である。

上図が、トルクヒンジ機構の基本構造である。これで、回転運動と任意角度で停止させる は、原理上実現できる。これを具体化する際に、あと考えねばならないのは、「摩擦力による部品の摩耗を軽減させる機構」である。例えば、バネワッシャーを向かい合わせにして摺動部品間に挟みこみ摩擦面を限定的にし、最後にナットで締めこむなどである。※ ここは、ヒンジメーカー各社の極意がつまっています。

5.トルクヒンジ機構に必要な性能(モーメント)を考える

 先の図に対して、簡単にモデル化してみると、例えば、下図のようになる。

Fは操作力、fは摩擦力である。Wは、場の力である。一般に任意角度で停止することが問われるのは、放っておくと重力などの場の力で回転体が動いてしまうからである。よって、モーメントを考える際は、場の力を考えておくべきとし、描いた。

さて、上図において、搭載するトルクヒンジに最低限必要なモーメントは何であろうか? 操作力の項を取ればよいので、M=Wl-fδ [Nm] である。逆に、最大値は摩擦が消えた時だからM=FL+Wl である。

また、上記のようになるには、どれくらいの力でストッパーを締めつけていればよいか? 操作力を加えていない状態で、動いてはならないから、摩擦力と場の力が釣り合っていることが前提である。⇒ W=f

Wは、回転体の形状で決まるのでここでは既知の定数とすると、

W=f=μP ⇒ P = W/μ と考えられるので、トルクヒンジのストッパーを締めきる力Pは、W/μ 以上にすればよいと分かる。

◎ トルクヒンジのモーメント:WI-fδ≦M(≦WI+fδ) を作ればよい。

◎ ストッパーの締め付け力:P≧W/μ

以上、トルクヒンジ機構の基本について書いてきた。自分で設計するときに、または専門のメーカーさんと交渉する前に計算するのに役立てて欲しい。

本日の動画:塩川の滝

 ここはかつて熊野信仰にのっとり、滝をご神体とした滝行が行われていた場所です。涼やかな姿ですが、見ていると何だが温かい気持ちになります。頭もさえてくるような気がします。各1分ほどの動画ですが、お楽しみください。相模原市の塩川滝は、車で直接行けます。また、滝の近くに、鮎料理屋、兼温泉旅館があるので、身体を休めることもできますよ!おすすめです。

滝口

滝壺

全景