電気製品の設計をしているとき、「この製品の固有周波数は、どのくらいだろう?何かの振動の周波数に近くて、共振したりしないかな?」と疑問に思うことがある。
特に、スピーカーを搭載していたり、振動する環境下で使われる製品ならば、尚更である。そんなとき、設計した製品の固有周波数を概算する、多分有効だと思われる簡単な方法を思いついたので、ここに記すことにした。多分、振動体を専門に扱っている技術者ならば、常識も常識だと思う。だって、高校物理程度の知識だから。。
【設計中の製品の固有周波数を概算する方法】
まず、製品の固有周波数とは何か?を少し考えてみる。
製品には、沢山の部品が使用されており、その全てに固有の周波数がある。製品の周波数分布は、それらの各部品の周波数分布の合成である。さて、その製品は、一般的には、ある平面に乗せて使用することが多い。ということで、一般的に製品は、平面との接触面に、「ゴム脚」などの弾性体を配置する。このゴム脚が、製品の自重で微妙に沈み込み、製品の位置が安定する。これは、重りを吊るしたバネが安定する現象と同じである。重りを少し押し下げ、手を離せば、バネは安定位置を中心に上下に振動する。このことから、一般的な製品の振動現象は、まず、外界の物品と一番に接触する弾性体に着目し、その固有振動を考えれば良いと分かる。
では、早速考えてみる。今、下記のような電気製品があるとする。
図1. プロジェクタを平面に置いた状態
先ほど説明した、ゴム脚が、微妙に歪むので、それを誇張して表現してみる。
図2. ゴム脚が製品の自重で変形しつつある様子のイメージ
ここで、運動方程式を立ててみる。運動方向としてZ軸を図2のようにとる。製品重量をM[kg]、微小変形量をz[m]、ゴム脚のバネ定数をK[N/m]とする。
・・・(1)
今、着目しているのは、ゴム脚の微小な弾性なので、場の力Mgの影響は小さいから、無視することにする。すると、
・・・(2)
となる。両辺をMで割ると、、
・・・(3)
となる。ここで、(K/M)は、固有振動数ω[rad/s]の二乗である。ωは、ω=2πf という関係式があるので、、、
・・・(4)
と言う具合に、固有周波数f[Hz]の式が導ける。ところで、図2において、ゴム脚が自重で変形しきったときの変形量をL[m]と置く。設置面からの反発力(垂直抗力)をN[N]とすると、つり合いの式は、、
N=Mg-KL
・・・(5)
となる。ここで、製品が振動するときのことを考える。ゴム脚が変形する瞬間では、垂直抗力N=0と考えられるので、
Mg=KL
・・・(6)
とできる。(6)式から、
・・・(7)
と近似できる。この式を、(4)式に代入すると、、
・・・(8)
となる。電気製品の設計現場では、一般に、単位は、mよりも、mmをよく使うので、単位変換をすると、、
L:ゴム脚の変形量[mm]
・・・(9)
と言う具合に、固有周波数が求められる。(9)をみると、製品重量Mやバネ定数Kが消えている。従って、単純に、ゴム脚一つの変形量Lのみに着目するだけで、製品という系の固有周波数を概算することができる。
ここで、こんな近似使いまくって、計算結果が信頼できるのか?と思われるかもしれないが、、ここでは、「想定使用(試験)下の振動条件と、計算で求めた系の固有周波数が近いかどうかを知り、設計方針を立てることを目的としているので、近似計算の結果で十分」だと私は思っている。設計方針というのは、例えば、「固有周波数を概算して、それが振動条件の周波数に近ければ、、ゴム脚の硬度、形、大きさを変えたりして、Lを調整しよう。試作のときに検証できるように、複数パターン作っておこう」という思考のことをさす。
電気製品の設計の現場において、製品の固有周波数は、恐らく、やってみないと分からないという感じが多いと思う。しかし、やってみた結果、悪い方に転んで焦るよりも、ざっくり予測して、複数パターン準備しておく方が、良いと思うのである。是非、活用に向けて一考いただけたらと思う。
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滝とは言いませんが、激しい流れです。その姿を見て、音を聴いていると、雑念が消えていくような、そんな感じがします。自然に触れることの素晴らしい効果の一つだと思っています。