兵法書の活かし方

書店のビジネス書コーナーに行くと、兵法書が置いてある。

例えば、「孫氏」「尉繚子」「十八史略」などである。

これらの兵法書は、戦場での殺し合いに勝利する方法論である。長い中国大陸の戦いの歴史の中で見いだされた合理的かつ有効な理論である。呉氏や孫氏に至っては、2500年以上も前の話である。(日本では、縄文~弥生時代)

書店に置いてある兵法書の中身を見ると、原文の和訳とその解釈がつらつらと書いてある。頭の中では、現代日本に生きる平和ボケした我々には想像もできない戦場と、一対一、一対多、多対多 の殺し合いをイメージする。

そして、その解釈を、「そんなものなのか…」と受け入れるに終始する。

これでは、意味がないのである!

なぜなら、我々が直面しているのは殺し合いの戦場ではないからである。これを、我々が直面している困難な場に置き換えなければならない。

では、どうすれば置き換えられるであろうか?

ここが、読者に求められる重要なところである。例えば、下記のような文章は、どう考えるであろうか?

「 夫兵形象水。水之形避高而趨下、兵之形避實而撃虚。水因地而制流、兵因敵而制勝。故兵無常勢、水無常形」

(和訳)

それ兵の形は水にかたどる。水の形は高きを避けて低きにおもむく。兵の形は実を避けて虚を撃つ。水は地によりて流を制し、兵は敵によりて勝を制す。故に兵に常勢なく、水に常形なし

(解釈)

兵(=戦い、軍、軍団)の形(=扱い、在り方)は、水の形のように考えよ。

水は、高いところを避け、低いところに向かって流れる。

兵は、(備えが)充実している箇所を避け、甘い箇所を攻撃する。

水は、地形によって、流れ方が決まる。

兵は、敵の在り方によって、勝ち方が決まる。

従って、兵も水の形も、一定普遍などというものない。

この文章をみて、どのように今直面している場に置き換えればよいであろうか?私のお勧めは、上記、「兵」を「自分の直面している困難なこと」に置き換えることである。

例えば、兵 を 研究開発 と置き換えてみる。すると、解釈は、下記のようになる。

「研究開発の在り方は、水に例えて考えよ。

水は、高いところを避け、低いところを流れる。

研究開発は、既に競合多社が多額の資金を投じてヒシメイている分野や方法論を避け、あまり開拓されていない分野や方法を試そう。

水は、地形によって、流れが決まる。

研究開発は、競合多社の研究状況によって、我々が利益を出すための戦略が決まる。」

とまあ、こんな感じに対比させることができ、既存とは異なる分野の開拓や、方法論のアイデア出し が直近の方針となる。

自分で上記文章をやっていて思ったのは、「 水は、高いところを避け、低いところを流れる 」の対比が一番重要ということである。

自分が定めた困難(=兵)は、どんな特徴があるのか?どんな強みと弱みがあるのか?の分析をしているからである。

ちなみに、この時点で、自分の定めた困難 の 完全に解決された状態(=勝利条件)が明確になっていなければならない。でなければ、水の流れに例えたところで、勝てる戦略にはならなくなる可能性があるからだ。

ぜひ、兵法書を読む場合は、「和訳し、兵を、自分の直面している困難なこと に置き換えて」みて下さい。少なくとも、勝利条件の明確化と合理的と思われる戦略指針は立てられると思います。

では!

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